
蔵には5台の洗濯機が使われている。
ぞうきん用に1台、洗米道具用に1台、醸造道具用に3台。
たわしやスポンジなど手で洗う道具も細かく用途別に整然とわけられ、
使いこなされている。
蔵全体が巨大な台所で、お酒を料理だと考える。
精米し、米を洗い、米を蒸し、麹米をつくり蒸し米と合わせ水を入れたところに酵母を加えて発酵させる。いきなり大量に材料を混ぜ合わせると発酵がうまくいかないので、まずは小さなタンクで仕込み*、そこから3段階にわけて蒸米・麹米・水の量を増やしていく。これがお酒を搾る前のもろみといわれるもの。このもろみが酒蔵の写真などでよく目にするような大きなタンクいっぱいの料理になると考えると、原材料のほんのささいな扱い方が最終的な仕上がりに大きく影響することが想像できるだろう。しかもお酒の場合、料理を実際にこしらえていくのは微生物。杜氏や蔵人の裁量は、その微生物をうまく働かせることができるかどうかにかかっている。仙頭杜氏曰く、「こちらがコントロールしていると気づかれないように、自由に、気持ちよく働いてもらう」環境を整えるのだ。私たちだって微生物だって働く場所は汚れているより、きれいにこしたことはない。そのためにも、清潔にはどんなに気を使っても使いすぎることはない。徹底的に清潔にすることはきれいなお酒造りの最低必須条件というわけだ。
どんなお米で造っても、繊細で透明感のある仕上がりが印象的な仙頭杜氏のお酒は、ほんのささいで大きな心遣いに裏づけされている。
* 小さいタンクに入れずに、最初から大きなタンクで仕込む蔵もある
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仙頭さんのお酒は線が細い佇まいのきれいな美人のように繊細です。「酒質と人格は反比例する」とご本人は云われますが、私は仙頭さんの中に線が細いたたずまいのきれいな美人が住んでいるのだと思います。ふだんはそれを隠すように毒舌をはいておられますが、それはその美人を隠すためのカモフラージュなのです。
そういえば昨日スタッフのイッキー先輩が関東に出張し、某蔵に行ってきました。(詳しくは本人からおいおいブログで報告があると思いますが)やはりその蔵でも、道具を洗う方法を変えただけで、お酒が格段にきれいになったそうです。