高知は安芸郡の土佐しらぎくの蔵を訪ねた。
2月後半の早朝5時半、冷たい空気がぴーんとはりつめたなか、
湿気とともに漂ってくるのは米の蒸される匂い。
このもくもくと白い蒸気の立ち上る姿こそ蔵のはじまりの風景だと思い込んでいたが違った。
仙頭杜氏の朝はそれより数時間前からはじまっている。
夜中と朝の間、人が寝静まり車も通らない、
空気の動かない時間帯こそ杜氏の仕事をするとき。
匂いを嗅ぐことは、自分ができる数少ない仕事だと仙頭さんは云う。
麹やもろみの動きを数値化はするけれど、数字ですべてはわからない。
大きな頼りにしているのは、自分の鼻で感じることができる匂い。
微生物たちに気づかれないよう、彼らが気持ちよく動いてくれるためにはどうしたらいいのか、
私たちが寝静まった時間、仙頭さんの鼻は数字には表すことのできない、
目では見ることのできない世界の微細な動きをとらえている。
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お酒の仕事をしている人は当たり前なのだろうけど
においにすんごく敏感です。
とどろきスタッフも然り。
入社したてのころ、髪につけるクリームをかえたとき(ほんのり香る程度です)、何人ものスタッフから「あれ?なにか変えた?」って聞かれたり、ふつうに洗ったつもりの器でお茶を出すと「あれ?洗剤がまだ残ってる」っていわれてぎょっとした(笑)ことを思い出します。
それから数年、いいか悪いかわたしもいつの間にかなんでもかんでもすぐにおってしまうくせがつきました。くんくん