
「なぜか飲むとからだが楽だって気づいたのよね」
先日お会いした日本酒ライターの藤田千恵子さんが、生酛(きもと)造り*の日本酒について話すなかでぽろっと云われたそのひと言で、自然派ワインとぴぴっとつながった! 自然派ワインを飲んだ翌日は楽だよー、とはよく聞く話。その年にその土地でできたぶどうと実直に向き合い、自然の微生物や菌の動きを尊重し、できるだけ人為的関与をしないワイン、と生酛造りの日本酒に共通点がチラリと見えた。
ある日、特に疲れている夜に好んで飲むものがいつも同じ造り手さんのお酒(ワイン)だということに気づいた。からだがほっとしたい、解きほぐされたい、と無意識に選んでいるお酒は、どこか肩の力が抜けているような、飲みながら深呼吸をしているような気分になるお酒。藤田さんも、最初は「楽だから」と意識して生酛造りを選んでいたわけではない、のではないだろうか。理屈や銘柄や造りのうんちくなしで、頭ではなくからだがお酒を選ぶ。きょうはどんなお酒に手が伸びるか。まずはからだに聞いてみよう。
*生酛造りとは… 昔ながらの日本酒の製造法。日本酒の仕込みの最初の段階「酛(もと)」を造る際、酒造りに必要のない雑菌などの繁殖を防ぐために樽のなかを酸性に保つ必要があります。そこにあらかじめ準備しておいた乳酸を添加して造る方法を速醸系(そくじょう)、もともとその蔵や空気中にいる天然の乳酸を取り込んで造る方法を生酛系といいます。生酛系の方が、時間も手間もかかります。